2010/01/12

育つ道具

今年に入ってマサ子が土鍋でご飯を炊くようになりました。これまでに何人もの人から、「土鍋のご飯はおいしい」と聞いていたのだけど、いざ食べてみるとまったくもって同感、ものすごくおいしくて毎食お代わり人生です。どうしてもっと早く始めなかったんだろうと悔やんでしまうほどのうまさ。

さて、土鍋で炊くようになってから、どうしてもほしいと思うようになった道具があります。

おひつです。

炊き立てのご飯をそのまま土鍋に入れておくと、火を消してからも土鍋の余熱でおこげが増えていくし、なにより鍋が水分を吸収しないので、せっかくのご飯が鍋の場所によってべちゃべちゃしてきてしまいます。そういう難点を解決してくれるのがおひつ。

そこで、おひつについて調べてみたら、これがなかなか素敵な道具でした。

使い始めはご飯粒がこびりつくので、ぬらしてから使い、当面は白米や玄米、麦ご飯といった油分のないもので育てるらしい。やがて、表面につやが出てくると、こびりつかなくなってくる。そうすると炊き込みご飯や酢飯を入れても、色が悪くなるようなことはなくて、半年ほどで釜揚げうどんや素麺の器にも使えるようになるんだそうな。見た目だけでなく機能も向上していくのはすごいです。曲げわっぱのおひつの情報だけど、江戸おひつや関西おひつでもある程度同じなんじゃないかな。

最近、似たような「育つ道具」を見つけ愛用しているものがあります。ダッチオーブンです。炭で煮炊きする鉄鍋だけど、これも使っているうちに、鍋の表面に酸化鉄の皮膜(黒錆)ができて、鍋の色が黒光りしてきて、やがて愛用者の間で「ブラックポット」と呼ばれるような「強者」になるんだそうな。こうなると、食材がこびりつきにくくなるし、たとえこびりついてもたわしでこすればすぐに落ちる。また、鉄ならではの弱点である錆にも強くなる。これも育つ道具の典型といえそう。

「育つ」といえば、陶磁器は使っているうちに貫入(かんにゅう。釉薬に入った小さな網目状のひび)に茶渋などが入って綺麗に網目が浮かび上がって味わいが出るし、漆器は艶が出て肌の透明感が増してきます。他にも使っていると手になじんできたりする道具はあって、でも結局、美とか手になじむといった感性に訴えかける変化が多いようです。

その点、おひつやダッチオーブンがすごいのは、使っているうちに機能性が向上するところ。スペックアップです。これこそ、育つ道具の王様。

「物を大切に」なんてことをいうけれど、新品の時が一番綺麗で機能も優れていて使っているうちに、ただみすぼらしく性能も落ちてくる消費材と、おひつやダッチオーブンのような「育つ道具」では、「大切にする」ことの意味がまったく違う気がします。どんどん使ってどんどん育ちどんどん鍛えられどんどん丈夫になる道具に囲まれて生活ができたらこんなに素敵なことはないなと思うのです。

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